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聞いてないのに、このひと、自分のことをペラペラしゃべり出した。


まあ、時間つぶしにはいっか、と聞いてあげてたのに、すぐに語り終えちゃった。
だって、この店のマスターだってこと以外、自分のことは何も覚えていないんだもの。

「ですから、私が記憶しているのは、お客様にぴったりの珈琲をお出しするのに必要なことだけなのです。

ええ、名前もわからないのですよ。

お客様はマスターと呼びますから、本名なんて必要ないでしょう?」

そんなの、嘘だよ。
名前が必要ないなんて、寂しすぎる……

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