「お客様は、この曲がお嫌いなのですか?」
不思議そうに尋ねるマスターに、私は苦笑した。
そう……この流れ。
去年も、その前も、この若い店主は首を傾げて同じ口調で尋ねるのだ。
「いえ、家族を思い出すのです。家に帰ると、いつもこの曲がかかっていたものですから」
私は、毎年毎年、同じ話をマスターにしている。
初めて聞くような顔で、彼はじっくり耳を傾けてくれるのだ。
だから私は甘えて話してしまう。
「私がこの街に戻るのは、クリスマスイヴだけなのです。家族と会うのも、年に一度のこの日だけ……」