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「なんて……こちらは私のおごりです」

え? 嘘、いつの間に用意したの?
目の前に出された白い珈琲カップ。
自販機よりも、出るの早いよ。
だけど、これって珈琲じゃないよね。
カップの中も白いんだけど。

「お客様は珈琲がお好きですよね?」

だからこれ、珈琲じゃないって。
しかも嫌いだし。

「ミルクの中にスプーン一杯分だけ、特別な珈琲が入っているのです」

え……? ちょっとびっくり。だってわたし、いつもそうしてたから。

珈琲は苦くて嫌い。

だからわたしは珈琲好きのパパといても、いつもミルク。
だけどほんとは同じものが飲みたくて、スプーン一杯、パパのカップからこっそりもらって混ぜていた。

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